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2020.11.07
速報~退職手当共済制度の “公費助成”、廃止か?!

 2020年10月号の月刊『保育情報』は、社会福祉施設職員等退職手当共済制度(実施主体:独立行政法人福祉医療機構)の公費助成に関する情報を伝えています。これによれば、厚労省は公費助成の廃止を含めた見直しに着手したとのことです。しかし、制度創設の目的からみても、保育所の実態からみても、公費助成廃止は論外といえます。詳細はまだわかっていませんが、通常なら遅くとも12月中には厚労省内での予算要求額が確定することから、状況は切迫しているといえます。今回は現時点で確認できる情報と役員会としての見方を会員のみなさんにお伝えします。 

1.見直しの判断はいつ?

2021年度予算の概算要求は9月30日で締め切られ、現在は厚労省内で要求額の詰めが行われているものと思われます。公費助成が継続されるとの情報もありますが、公費助成を継続させることができるかどうかは、ここ1~2カ月でどれだけの運動がつくられるかにかかっています。国の予算編成スケジュールをにらみながら、機敏に対応していくことが求められています。 

2.公費助成見直しの内容

2017年12月18日に開催された第20回社会保障審議会福祉部会では、以下のことが確認されました。 

●2017年6月に公表された「子育て安心プラン」により、遅くとも2021年3月までの3年間で全国の待機児童を解消するための取り組みが行われている。
●こうした状況を踏まえ、保育所に対する公費助成を一旦継続しつつ公費助成の在り方について更に検討を加え、2020年度末までに改めて結論を得ることとする。 

 厚労省子ども家庭局保育課予算係の担当者は、2021年度予算に係る公費助成の見直しに当たっての厚労省の基本スタンスについて、以下のように説明しています。
①第20回社会保障審議会福祉部会で確認された「待機児を解消するためのとりくみの状況を踏まえ」という前提で検討を行うことになる。
②今回の見直しも、社会福祉法人とその他の経営主体との「イコールフッティング」の観点からの検討が中心となる。
③公費助成を廃止するか、継続するかは、現時点では白紙の状態である。 

3.公費助成廃止のここが問題!!

 社会福祉退職手当制度は1961(昭和36)年より「社会福祉施設職員退職手当共済法」に基づき実施されました。本制度創設の目的は、「社会福祉法人の経営する社会福祉施設等の職員の待遇改善により職員の身分の安定を図り、もって社会福祉事業の振興に寄与する」こととされています。保育士の処遇改善が国民的課題になっている今、制度創設の目的を実現させることが保育分野における今日的な課題ともなっていることを確認しましょう。今求められているのは公費助成の廃止ではなく、助成継続を含めた制度全体の充実です。 

(1)「イコールフッティング」論のまやかし

 退職手当共済制度の目的を踏まえれば、営利法人等に社会福祉法人を合わせるということ自体がそもそも筋違いです。しかし、厚労省の主張する、「イコールフッティング」論を前提にしたとしても理屈はたちません。下図は2019年1月28日開催の第41回「子ども・子育て会議」に提供された資料(2018年7月調査)の抜粋です。保育所の経営主体(民間事業者)に占める社会福祉法人の割合は86.9%、営利法人はわずか4.9%にとどまっています。

経営主

社会福祉法人

営利法人

学校法人

その他

割合

86.9%

4.9%

2.8%

5.4%

※保育料の無償化にあわせ、給食の提供が義務づけられた保育所の「副食材料費」を保護者が実費負担することになりましたが、ここでも「イコールフッティング」論が展開されました。幼稚園に子どもを通わせる親だけが実費を負担するのは不公平だ、という理屈です。「イコールフッティング」論のまやかしは決して看過できません。

(2)保育所職員の身分の安定に逆行

 社会福祉事業の発展のためには、そこで働く職員の身分の安定が必須であり、その条件の一つとして退職手当共済制度がつくられました。制度ができてすでに60年近くたとうとしていますが、保育士処遇の不安定さは未だ解消されず、保育士確保は困難を極めています。
 このような中、保育の量の確保と質の向上に寄与することを企図した「退職手当共済制度」の改悪は論外と言わざるを得ません。保育所職員の身分の不安定化が保育事業に与える影響を正面から受け止め、制度理念の具体化のための検討に舵をきるよう国に求めなければなりません。

(3)人件費率の上昇と保育士処遇への影響

 退職手当共済の掛け金は職員一人当たり134,100円、その1/3の44,700円を保育所が負担しています。公費助成が廃止されれば、職員一人当たり89,400円の負担増です。対象職員が25人の場合、年間2,235,000円が人件費に加算されます。営利法人とのイコールフッティングを理由に、営利法人に比べて人件費率が20%も高い保育所の人件費率を引き上げるようなことは許されません。
 公費助成が廃止になれば、限られた財源のなかで保育士処遇の改善にむけた取り組みを躊躇する法人がでてきても不思議ではありません。保育士処遇への影響は必至といえます。

 

 経営者賛同署名のお願い

 今後、公費助成の継続・拡充を求める要望書を提出すると同時に、「賛同署名」にとりくみます。
 現場の要望を厚労省や内閣府に届けるために、要望書を作成し賛同を広く呼びかけます。

 1.ご賛同の手続きについて
  要望書にお名前・法人名等ご記入の上、下記までFAXにてご送信下さい。
  対象:経営の立場から要望します。理事長・理事・園長等、法人役員の方にお願いします  
  締切:12月10日
 2.賛同署名の活用について
  関係省庁・国会議員・報道各社等に届け、懇談等を申し入れる予定です。
  公表する際は、お名前・都道府県・法人施設名・役職名のみ表記します(連絡先は非公開)。

 ●賛同署名>>>202010 賛同署名(保育園経営者)
 ●賛同署名説明資料>>>賛同署名説明資料202010